RLくろしろ: あの時の廊下。
RLくろしろ: 約束の場所、けれど――何度訪れても彼女はいない。
RLくろしろ: 来る筈がないのだ、死んでしまった。いなくなってしまったのだから。
RLくろしろ: 克服したと思っても、その事実を再認識する度に悲しみは胸を締め付ける。
真央: 「ここで・・・もう一度会おうって・・・言ったのに・・・」
真央: 「わたしに見せてくれるって言ったのに・・・」
RLくろしろ: 呟きに答えてくれる優しい声の主はもういない。
RLくろしろ: あの蒼い瞳と微笑みあう事はもう永遠に出来ない――
RLくろしろ: 積もる思いが、もう何度目かの涙を溢れさせようとした時。
RLくろしろ: ラティア「――君が真央・ウィルマか?。」
真央: 「・・・?はい、そうですが?」
RLくろしろ: 背後から、唐突に声をかけられた。見知らぬ声だ。
RLくろしろ: 振り向いたその先にいた少年の姿にも覚えはない。
真央: 「あ、あの・・・どなたですか?」
RLくろしろ: その問いには答えず、少年は踵を返すと。
RLくろしろ: ラティア「エレナ・アロライトの遺言を預かっている。」
真央: 「・・・っ!!!」
RLくろしろ: それだけ言って、ついてこいとばかりに冷たい朝の空気に支配された廊下を歩き始める。
真央: 「待って!待ってください」
真央: 追いかける
RLくろしろ: ラティア「彼女が亡くなる数日前、俺はここの修練場で彼女と手合わせをしたんだ。」
RLくろしろ: 後を追ってきたのを気配で察したのか、歩きながら言葉を続ける。
真央: 「それで彼女はっ、エレナはなんて!?」
RLくろしろ: ラティア「――その後、少し話をした。君の事も色々と話していたよ。結果的にそれが遺言になってしまったのは残念と言わざるを得ない。」
RLくろしろ: ふいに立ち止まると、そこにあった扉に手をかける。
RLくろしろ: 真央には覚えのない部屋だが、確かこの辺りは殆ど物置じゃあなかったろうか。
真央: 「エレナが・・・私のことを・・・」
真央: 「あの、物置に何か・・・?」
RLくろしろ: ラティア「彼女は――」
RLくろしろ: エレナ「友達と約束があるんです。騎士になった私を一番先に見てもらうって。」
RLくろしろ: エレナ「でも、見てもらうだけじゃ悪いから――この教会の、私だけが知ってるとびっきりの秘密を教えてあげるの」
RLくろしろ: エレナ「この教会にはね“世界で一番綺麗な朝日”を見れる部屋があるんです」
RLくろしろ: ラティア「俺は『他には秘密で君達の約束の日が終わった後見るなら』と言う条件で教えてもらえたんだ。」
RLくろしろ: そう言いながら、扉を軋ませて物置を開ける。
真央: 「ここが・・・」
RLくろしろ: 雑然と様々な物が並び、埃臭い空気が漂う部屋。
RLくろしろ: 軋んだ音と共に扉が閉まり、天井付近に申し訳程度につけられた換気用の窓だけが唯一の光源。
RLくろしろ: お世辞にも“世界で一番綺麗な朝日”などと言う物を連想出来る部屋ではない。
真央: 「あ、あそこから見るんですか?」
RLくろしろ: ラティア「違う、少し準備がいるんだ。待っていてくれ。」
RLくろしろ: そう言うと、彼は壁面に据え付けられた荷物の幾つかをずらし始めた。
真央: 「は・・・はい」
RLくろしろ: 埃が舞い、荷物に隠されていた壁があらわになり――
RLくろしろ: ラティア「これでいい、君はそっちの壁を見ていてくれ」
真央: 「・・・?」
真央: 言われるがままに壁を見つめる
RLくろしろ: 本当に何もない壁、薄暗い室内で影に覆われた壁。
RLくろしろ: そこに―――