RL伏見堂： 幾度目になるだろうか、この音は―――硬い刃金の打ち合う音色。
RL伏見堂： しかし、その音色の発するところには、金属はない。
RL伏見堂： あろうことか―――この音色を奏でるのは、生身の人間達であった。

RL伏見堂： 狭い路地を跳躍し、眼前に立つは真教浄化派“氷の静謐”所属―――…最下層戦闘兵“Angel”
RL伏見堂： 大よそ個性と言うものが感じられない白装束を纏った死神は、その手刀を振るい、悉くを切り裂く。 シラノ： 「……チィッ」

シラノ： ただ、『限りなく』刃金に近い、四肢と四肢が打ち合う音。一合、二合、と競った後に、再び距離を取る。
シラノ： いつの間にやら“ナイトウォッチ”は飛ばされ、その下にある妖物の眼窩で敵を見据えている。──知らず、嗤いを浮かべて。
RL伏見堂： 一息吐くと、息が白い―――…真っ白だ。
RL伏見堂： 戦闘によって上昇した体温のせいか、躯からは湯気が上がっている。

RL伏見堂： 『…………』

RL伏見堂： 敵が一歩下がる―――…その構えは、突貫の構え。相手を刺し穿つ為の姿勢。

シラノ： 「フ……カ、カカ、カッカッカッ…………」　　頬を、首を、体の至る所から出血している。それなのに、何が愉しいのか、白い吐息を吐き出して笑う。
RL伏見堂： この一撃で雌雄を決するつもりのようだ。白装束の下の仮面は表情を伝えない、が―――
RL伏見堂： その気迫･気配は雄弁に語っている。

シラノ： 「結論ヲ急グカ。“Angel”」　構えを見て、無形の位へ。

シラノ： 右腕は、右手は油断無く、手刀の形のまま。
RL伏見堂： 周囲に“白”が立ち込める。戦闘で破壊されたバルブから、激しい音を立てて蒸気があふれ出している。
RL伏見堂： その“白”が―――…動いた。
RL伏見堂： 風を裂いて走る一撃は必殺。躊躇いも惑いもなく、ただ、シラノへと向けて駆けるッ!!



シラノ： 終焉の時が来る。
シラノ： ただ『勝利者』とならんがために、剣を手にした者たちにとって、それは、『ただ一人』を決める時。
シラノ： 波浪の如く、向かってくる敵へと、正面から肉薄する。





RL伏見堂： ―――…ふと、窓の外を見る。
RL伏見堂： 暖かなＮ◎ＶＡだというのに、外は白い。

RL伏見堂： ―――…結局、決着は着かなかった。

RL伏見堂： 自分の放った一撃は相手を掠めるのとどまり、相手の一撃も浅く裂いたに過ぎない。
RL伏見堂： 深い傷ではなかった。だというのに、このような霧の日は、傷口が妙にむずがゆい。
RL伏見堂： 痒みは、あのときの決着を求めるかのように、君を急かす。 シラノ： 「……」　　ひとつ間違えば抉り出されたであろう傷──左の頬に消えた古傷を掻く。

シラノ： sin-red-line　が『生活空間』であるならば、いつかまた、まみえる事もあるだろう。が、それは誰も確約しない。保障もしない。
RL伏見堂： しかし、それでも―――
RL伏見堂： ―――…それでも、きっと、アイツとは、また遭い見えるだろう。



RL伏見堂： そして、奴の名―――…銘“銀光 -Slash!-”がストリートに現れたのは、しばらくしてからのことだった。





RL伏見堂： ―――…Scene End...

---