《難攻不落》っ!!!　トーキョーNOVA the Detonation リプレイ“銀色の虹 with 魔術争乱”

　　　　　　　　　　　　　　　CUT ACTION !!!



Stage ：　　　　　　　　　“果て無き果ての楽園-Tir na n'Og-”

フェルト・スクリーヴァ　　AR2　Setup:None
Aus-os　　　　　　　　　　AR2　Setup:None

晃　　AR2　SUなし

“銀灰”：AR2　　SETUP：none
エリン：AR2　　SETUP：none
フィルヴォルヴA(カブキT17)：AR2　　SETUP：none
フィルヴォルヴB(カゲムシャT11)：AR2　　SETUP：none

◎AR2：フェルト

光の平原が広がる。
足元には青き草の変わりに白き雲。
　　　　　　　　　　　　　　目に映るのは黄金たる永遠の夜明け。

神話世界の戦場。


エリン『───さぁ、始めましょう、“黎明教書”』
エリン『神話の再現を』

▽セットアップ追加
Balor：AR2　　　　SETUP：[協調行動]＞銀灰
エリン：AR2　　SETUP：[協調行動]＞銀灰

Aus-os　　　　　　　　　　AR2　Setup:[協調行動]＞晃
フェルト・スクリーヴァ　　AR2　Setup:[協調行動]＞晃

　ゴォン───

　　　　　　　　　　　　　　“単眼鬼王”は、配下の神々を従え、前進を始める。

「…………かはぁ」
息吹が漏れる。
鋭い呼気が機内に溢れ。
その躍動が、機体全身を覆う。

　　　　　　ゴゴゴゴゴゴッ

大地が震え、縦横に亀裂が走る。
天が歪み、空に亀裂が走る。

「……フェルト。久々に、あれを出すか」

　右腕を、天に掲げる。
　歪なまでに装甲で肉厚な右腕が天を突く。

■インスタント：〈変化〉【生命】スート　強化術式：変化指定

[Ａ]起動：スリーアクション
[m1]〈変化〉　【生命】7＋H8＋10＝25

　足元から炎が吹き上がる。
　機体を包み込む赤き炎。
　それが右腕を覆い、ビキビキと。
　装甲が歪み、形を変えていく。

　全てを穿ち、真っ直ぐに刺し穿つその形状。

　　　　　　　　　　　　　　　エリン『そう、それよ………全て知っているわ。貴女達の事は』

「ああ。そして、今度はお前に届く」
「その因果の全てを打ち貫く」

　生み出されたのは杭打ち機。
　愚直に、真っ直ぐにただ貫き穿孔する。
　ただ、それだけの得物だ。

■対神穿孔術式“牙突”作成

「(………)」
それは、楽園にはなかった概念。
"対神"。
神と相対するための武器。
わたし達が最初に持ちえた武器には、そんなものはなかった。――楽園の武具は、例外なく神を討てたのだから


一度の敗北で、わたし達は多くのものを失い……
そして、手に入れた

主の系譜とは別の魔術師。
鋼に神属性を織り込むことに長けた魔術師が用意した、128の武装のうち一つ。

今ではもう顔も思い出せない男の姿が脳裏に、シルエットで映る
わたし達をここまで繋いできた絆

この世界が紡いだ、特別な武器!!


「対神穿孔術式……“牙突”!!」


調子を確かめるように、機構内の炸薬が爆ぜる。魔力駆動ではない、何度聞いても斬新な感覚。


「……主……いけます!!」

「　応ッ！！　」

　右腕を弓のように引く。
　捻りを加え、引き絞る。

　超重量の無骨な機体。
　その足裏が大地に沈み、ぎりぎりと引き絞られる中。
　不意に力が、爆ぜる。
　大推力。
　機動性や、軌道修正、機体制御。
　そう言う余分な物はかなぐり捨て。
　ただ銃弾を打ち出すが如く、
　ただ真っ直ぐに、機体を射出する。

　刹那、大地が縦に砕けた。
　真っ直ぐに飛ぶ、巨大な鉄塊。
　我が身が砕けよとばかりに、真っ直ぐにぶち当てる。

[Ｍ]〈白兵〉＋〈自我〉＋〈飛行〉＋〈元力：炎〉　【理性】7＋3（装備）＋S7＝17

エリン『来る』
銀灰『───！』

巨神が、迫り来る敵を迎え撃とうとした時、

　　　　　　　　　　　　　ゴオオオオオオオオオオオオ！！！！

左右に従っていた、虚ろな騎士鎧達がその進路へ立ちはだかる。

〈デコイ〉【外界】4+D8(札)=１２

「邪魔だっ！！」

　飛翔する鉄塊。
　その総身を灼熱が押し包んだ。

DMG:　殴:10＋4＋SK＝24　※装甲無視

　　　ドゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォ！！！！

鋼と鋼の激突する轟音
灼熱を纏った切っ先が神々を引き裂いてゆく。
その手応えに、嘗ての熱さはない。
　　　　　　　　　　この神々には、魂がない。
　
エリン『くっ………　お前達───』

「時は流れ行く。俺達にも、そしてお前達にも」
「流れた時は帰らない。お前の軍勢もまた、遠き幻に過ぎないと言うことか」

　静かな呟き。
　その眼差しは、真っ直ぐに敵魔導書を見据えながら。

銀灰『そうして、魂を魔術師に求めることで初めて、神は神たる存在になる───』

銀灰『返礼するぞ、“魔術師”！！！』

───“単眼鬼王”は、その名に反し、無貌。鋼鉄の卵型の仮面に頭部が覆われている。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　オオオオオオオン！！！！

その右手に握られた剣を振り上げ、神は雄叫びを上げる。

[Ａ]起動：スリーアクション
[m1]起動：ナイトヘッド
[m2]起動：化外曼荼羅
[m3]起動：魔導書“妖魔来寇”(ゴッドブレス相当)

エリン『断片検索　───　伝承：主神ヌァザの最期』

[Ｍ]〈白兵〉＋〈自我〉＋〈元力：火炎魔人〉＋〈元力：風使い〉
【理性】7+2(ディスパ)+1(鉄意志)+1(サイバーリンク)+6(エリン)+S2(札)=１９


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　轟！！！

振り下ろされる剣が巻き起こすのは爆風。

■リアクション　AR1　晃

　鉄塊がその左腕をかざす。
　振り下ろされる剣を正面に受け止める！！
　その掌で、その装甲の厚みで。

M:＜白兵＞＜自我＞＜無敵防御＞＜突き返し＞
【生命】7＋2(ディスパ)+1(鉄意志)＋6（特技）＋4（フェルト）＋HK＝30

　土砂が真上に噴き上がった。
　剣の爆風、左掌の炎。
　神の力がせめぎ合い、拮抗し。
　行き場を失った力。
　天空へと飛んで、雲を吹き飛ばす。

銀灰『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ！！！！』

「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ！！！」

　剣が、左腕に押し込まれる。
　同時に、刃が機体に食い込んでいく。
　掌から、肘の辺りまで、深々と。

銀灰『───　お　ち　ろ　！！！』

　機内の晃。

　左腕に裂傷を刻ませながら。

「……まだだ、この程度は、どうと言うこともない」

　にぃっと、口元を歪め。
　その左掌を握り締めた。
　銀灰の神の剣を“握る”。

銀灰『………こいつっ！！！』

咄嗟に剣を退こうとするが

「　ようやく捕まえた……初めてだな、この距離は　」

　ぎしりと、肉厚の装甲に捉えられた刃は。
　邯鄲には抜けない。
　右手を、引き絞る。

「今度は、こちらの番だな」

「フェルト……お前の分もつけてやれ」
　がっちりと、相手を固定し。
　右腕を引き絞りながら、
　相棒に言葉を投げる。
「今回も、借りがあるのだろう？」

「……はい」
背後で答え

エリン　　　　　　　　　　　　　『くっ───　　バロール、振り払いなさい！　』

「無駄だ。装甲と出力“だけ”は、こちらが上だ」

エリンの声を制するように叫ぶ
「はい。主、魔力を回します!!」

　右腕に炎が漲る。
　魔導書の力が注がれ、力が漲っていく。
　かってないほどに、熱く、凄まじく。

「フェルトが世話になったようだな……まずは」
「こいつを」
「受け取るが良いっ！！」

M:＜白兵＞＜自我＞＜元力：炎＞＜鬼の爪＞　【生命】7＋3＋4＋H8＝22

　炎と燃える右拳が。
　バロールの頭部に叩き込まれた。

◎Reaction：AR2：フィルヴォルヴA(カブキT17)

〈白兵〉【外界】6+D3=９

　　　　　ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン！！！！

主に一撃を加えようとする機神に、周囲から臣下の神々が襲い掛かる。

対決敗北

〈挑発〉【感情】7+C8(札)=１５

DMG:爆　CK＋14＋4＝28　※装甲、軽減無効

　地殻すら割る超重量級の神の一撃。
　立ちはだかる臣下の神々を薙ぎ砕く。

神と神々の乱戦。
虚ろと言えど、その刷り込まれた宿命に従い、宿敵たる神に打ちかかり、君主から敵をもぎ離した。


　　　　　　　　　　　　　　ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ！！！


フィルヴォルヴの軍勢は次々と落ち、残ったのはその君主のみ。


エリン『………！』

エリン『お前達………』

神々の残骸を見て呟く。

銀灰『───彼らにも、ようやく休息が訪れたのさ』
銀灰『エリン、僕らは、未だ続けなきゃ』

銀灰『　　　　　　　　　　　　　　─── 導いて』
エリン『………了解。　　断片閲覧───』

[Ｍ]起動：[　カリスマ　：　リーダー　]

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ザァ………

“単眼鬼王”の周囲に、エリンの頁が舞う。
その一つ一つが、彼女を通じ、銀灰への助言を記す。

インスタント：【理性】　パントマイム1レベル!!

「主……此方も行きます!!」

長き時を2人で戦ってきた

主は戦士として歴戦
故にわたしもそうなのだ

掻い潜った戦いの多さ。対応しなければならなかった事態の多さなら

誰にも、負けない!!


〈パントマイム〉→〈アドレナライズ〉


魔力再装填
機神の右半身が、過剰な駆動に悲鳴を上げる

「(重い……!!)」

「……っ！」
微かに口元を歪める。
右腕に強い負荷を感じて。

フェルトにも、主の負担を軽減するために引き受けてきた重さの一部が、腕にぎしぎしと悲鳴を上げさせる

「(でも……!!)」


〈アドレナライズ〉【理性】5+S8=13

「動いて!!」


「絆を、繋ぐ、ために……!!」

「そして、繋げる為に、だな」
　過負荷のかかった右腕。
　火花の散るそれをゆっくりと引き上げる。

「“妖魔来寇”の魔術師」
「お前は、何を望んで神の力を振るっているのだ」

　対峙する。
　未だ、傷一つない神々の王たる者と。

銀灰　　　　　　　　　　　　　　　　「知っているか。“黎明教書”の魔術師-Master-」
銀灰　　　　　　　　　　　　　　　　「逃れえぬ宿命の存在を。───僕はそれに克つ為に戦っている」

対峙する神々の間で
草のように広がり流れる雲海から、機神の残骸から上がる黒煙がたなびく。

「心得てはいる、長きその道を歩んだ故に。――」

全身の駆動系が、ただ二度の全力行使で悲鳴を上げている。

「だが、それ故に知る。お前の降るおうとしている力は、余りに大きい」
「己が克つ為に、喪われる物の大きさを心得ているのか」

　足元を見る。
　山、谷、川、そして湖。
　全てが小さい。
　まるで、模型細工の景色のように。
　踏み潰せば、それだけで全てが消え去るほどに。
　人の街など、ほんの僅かに足を動かせば跡形もない。

「何も、残らないぞ。お前の手に」

銀灰　　　　　　　　　　　　　　「必要だったのさ」
銀灰　　　　　　　　　　　　　　「これだけの力が」
銀灰　　　　　　　　　　　　　　「これだけの犠牲が」

神が、皮肉気に笑ったように見えた

銀灰　　　　　　　　　　　　　　「僕が歩んできた時間は短い」
銀灰　　　　　　　　　　　　　　「何百何千と作られ、ただ死ぬ」
銀灰　　　　　　　　　　　　　　「兵器として投じられただ死ぬ」
銀灰　　　　　　　　　　　　　　「自我を自我として自覚せぬ内に死ぬ」
銀灰　　　　　　　　　　　　　　「───その運命の輪を叩き壊す、その為の力」

　　　　　　　　　　　ギシン、と神の右拳が音を立てる

銀灰　　　　　　　　　　　　　　「最期にエリンと出会えたのは行幸だったが」

「人には、全てを賭けてやり遂げねばならないことがある」
「そして」
「その上でなお、やってはならぬ事がある」
「その加減を誤った者を、見過ごすわけにはいかない」
「それが、自分の、そしてフェルトの闘う理由だ」

　　　　　　　　　　　ギシン、と神の右拳が音を立てる。

銀灰「来るが良いさ。此方は此方の全てを賭けよう」
銀灰「僕の、そしてエリンの望みを叶える為に、」

「では、参ろうか。此の方は、此の方の全てを持ってぶつかろう」
「俺と、そしてフェルトとの約束を叶える為に」


　永劫に近い刹那の中。
　対峙する神の間に吹き荒ぶは強い風。

「（フェルト……装甲と出力の他に、もう一つだけ勝った物を確信した）」

　静かに、心で語りかけた。

「（自分は今、君と“ここ”に在る事、それ自体が僥倖だ）」
「（最期とか、最初とか、再度とか未来とか……そう言う物は、関係ない）」

　微かにそう告げて、その口元を淡く和らげる。

「(はい)」
「(多くのものを犠牲にしてきた彼らとは違う)」
「(わたし達はたくさんの人に望まれてここにたどり着いた)」
「(今までだってそう)」
覚えてはいなくても、傷跡に刻まれた戦いの記憶
「(わたし達が2人、"ここにあること"を誇れれば、今までだってきっと……)」
そして、込み上げる思いに突き動かされて声を上げる
「わたしが晃と"ここ"に在る奇跡、その重みが、今ならわかる……!!」

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ゴォン………


対峙する二柱

先に動いたのは、“Balor”。



DIVINE WORK《Insensable》

　　　　　　　　　　　　　　　　　　───ゴオオオオオオオオォォォ………


轟音と共に、ホワイトアウトしていた世界が、徐々に晴れ始める。
辺りの雲は全て水蒸気と化してから、水分に戻って、雨になった。


　　　　　　　　　　　　　　………ぁぁぁぁざあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ───



そして、うす曇になってようやく、視界が通る。

魔力の残滓の光が、空間に走る
高温のプラズマ化した金属が空間に散る
過去、幾度も機神を大破させた魔眼の光。

機神装甲すら焼け溶かすその熱に、属性を得ただけの金属は耐えられない
光の中から現れた機体は満身創痍
装甲を失った痩身をところどころ晒し
左腕は、ひしゃげたフレームを支えるための外骨格たる装甲を失い、みしみしと悲鳴を上げ
そして、内側まで人の技術で作られた右半身は、杭打ち機ごと肩まで吹き飛んだ


だが


だが


この膝を付いていたこの機神はまだ立ち上がる

暁のように
火の鳥のように

素材の軋みを上げ、駆動の悲鳴を上げ

夜明けの太陽のように立ち上がる……!!


「まだ、動きます。晃……」
戦いの中でいつからか呼ぶようになった主の名

「今まではここで終わり、次の世代へと続いていた」

「でも、今は」

「まだ、続いている……!!」

「そうだ、まだ」

「何も終ってなどはいない……そうだな、フェルト」

「そうだろう、“妖魔来寇”！！」

　立ち上がり、残された左腕を握る。
　残った左拳が火傷する程に熱い。

　　　　　　　《　難攻不落　》

エリン　　　　　　　　　　　　　　　　『マナ消耗率130％に到達。　充填を開始します。時間を稼いでください』
銀灰　　　　　　　　　　　　　　　　　『いいや、来る』

　その言葉を裏付けるように。
　ぎしり、と機体を軋ませ。
　駆動系から冷却液を噴出しながら。
　二人の機体が、その一歩を踏み出す。
　悪夢のように、不死身であるかのように。
　何時かのように、またその歩みを詰めてくる。

「……さぁ、今度は。こちらの番だ」

　軋む機体を鞭打ち。
　フィードバックされた全身の痛みを押し通し。
　単眼の機神を前に、ゆっくりと歩みを進める。

　左腕を振り上げる。
　残された左腕。
　ひしゃげ、砕けかけた左腕。
　その左拳を、

　　　　　振り下ろす！！

〈白兵〉＋〈自我〉＋〈鬼の爪〉＋〈元力:炎〉
【生命】7＋3（装備）＋2（バトルチューン）＋4（フェルト）＋H3→キー効果HA＝27

　真っ赤に燃える左拳。
　その胸元に、真っ直ぐに叩き込まれた。

銀灰『───────────────ッッッッ！！！！』

◎Noreaction


“魔王”も剣を振り上げるが、間に合わない。

DMG:　爆:19＋4＋D7＝30　　　　※装甲、軽減無視

追加
Aus-os　〈血脈：神族〉【外界】D10　成立
DMG+10

　左拳。
　深々と、その胸元を抉る。
　炎。
　拳から直に、その内部の制御系を焼き尽くしていく。
　神の力。
　焼き焦がす炎を、更に熱く、激しく、昂ぶらせる。

「おおおぉぉぉぉぉっ！！」

　左拳を突き刺したまま、
　持ち上げる。

銀灰『　　　　　　　　が、はっ………　　　　　　　　』
　その機体が膨大な熱量に、真っ赤に染まる。

「これで終りだ、妖魔来寇っ！！」

DMG:40点

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ドゴォォ───………！！！！




吹き飛ぶ巨神。
　　　　　　　　　　　　永きに渡る二柱の戦いの中で、この光景は、初めての事だった。







雨降る戦場に、再び黒煙が吹き上がる。
煙を上げているのは、“Balor”。
砕け散った表面の内側が向き出しになり、その虚ろな姿を曝している。

エリン『　　　　　───っく、けふっ、ごほっ………』

DIVINE WORK《Guardian》

DIVINE WORK《Disappear》

銀灰『───エリン？』
エリン『　　　　　　　　　　　大丈夫です、“Master”。行けます………』

答えが返るまでに存在した間。ガリガリ、と歪な音を立てて、“Balor”も起き上がる。


銀灰『宜しい』
銀灰『───では行こう。全てを消し去る為に』

“Balor”の眼は、未だ閉じられたまま。
再び撃つ様子は見せず、両手に構えた剣を以て、甲神と対峙する。

　半壊した機体。ひしゃげた隻腕を前に、甲神も構える。
　弧拳一つを持って、神の王に対峙する。

銀灰：AR2　⇒　エリン：AR2　⇒　Balor(アヤカシE17)：AR2　　　SETUP：[協調行動]＞銀灰×２

晃:AR2　セットアップなし

フェルト・スクリーヴァ　　AR2　Setup:協調行動宣言→晃
Aus-os　　　　　　　　　　AR2　Setup:協調行動宣言→晃

半壊し、増設した装甲も剥れ落ちて、剥き出しになった機体。
ひしゃげた左腕を構え、弓のように引いて構える。

正面には大破しかけた単眼鬼王。
胸元に穿たれた拳の痕が生々しく残っている。
手応えで言えば、必殺の手応えであったのに。

「何が……彼らをここまで、支えているのだろうな」

答のない問いを発しながら。
肉体は、全身をたわめ。
限界を超えた駆動系は、その端々で紫電を這わせる。

「…………」

目を微かに細め。
鋭い呼気。

「絶っ！！」

　踏み込み。
　大地を砕き、真っ直ぐに正拳を突き出す。

銀灰『破ァ！！！』

　応じて剣を振り上げ。
　風を裂いて、斜に剣を振り下ろす。

　転瞬。

　踏み込んだ足、膝が微かに曲がる。
　すっと勢いを横滑らせるように、
　重心をずらしながら、
　蹴り足が踏み込み足とすりかわり、
　半身になって、身を沈めつつ。

〈白兵〉＋〈自我〉＋〈鬼の爪〉＋〈元力:炎〉
【生命】７＋５（装備）＋４（フェルト）＋H3＝１９

　拳を引いて、
　肩当からぶち当たった。

　超重量のぶちかましを、真っ直ぐに叩き込む。

[Ｍ]〈白兵〉【理性】7+1(サイバーリンク)+6(Balor)+6(リーダー)+S2(札)=２２

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ガァンッ！！！！

振動が機体を伝わる
接続された機神が、フレームの悲鳴を伝えてくる
ゆがんだ左腕の装甲板が、負荷を分散するチタン装甲を失い、打撃のたびに歪みを増してゆく

「晃……!!」

おそらく、次に守勢に回れば、体勢を立て直す出力を得るのは困難だろう

「問題ない。左腕が限界に達しただけだ」

力強い声が応える。
後がない。何時ものことだ。

「はい、でも……出来ればこのまま押し切ってください!!　　　こんなバランス、長くはもちません……!!」

出力を前のめりに回す

機体が前のめりに傾ぐ。

攻撃している限り。相手に重量をぶつけている限りは、此方はまだ戦闘を継続できる。

「行、け、ぇぇぇぇぇ……っ!!」

〈パントマイム〉az〈アドレナライズ〉【理性】5+S6=11

　　　　　　　　　　　　　　　　　DIVINE WORK《Godspell》

　　　　　　　　　───ドクン

　　　　　　　　　───ドクン

時間が引き延ばされる感覚。
　魂に響き渡る声。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　───　今の貴女、やけに喋るわね。

　　聞き覚えのある声。

「………!?」

一瞬、魔力循環が乱れる
イレギュラーな事態に思考が止まる
今の自分は「虚ろ」でない故に。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　───　そんな風に表情むき出しで喚く姿なんて、500年ぶりかしら

どうしてだろう
わたしがこの街に落ちて学んだことは
こんな、相手に、ぶつけるものではなかったはずなのに

この神と戦う理由は
義務でも、信念でもないものが、ある

ああ……

「此度気がついたのだけど」


「わたしはあなたが、嫌い、みたいですから」

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　───　あら。あははははっ───わたしもよ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　───　わたしも、貴女が大嫌い。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　───　だから、貴女がそんな風に『表情』を持つのだって腹立たしい。

叩きつけられる、剥き出しの憎悪。

「言ってなさいっ!!」

乱れた魔力を建て直し、機体に行き渡らせる

精神戦DMG No.21

「………っ、あ」

心が割れる

倒れる魔術師

そのときのオモッタコト

そう、わたしが心を喪ったのは　　　　　機能損傷なんかじゃない

そうして、辛い思いをリセットしなければ

わたしの心が砕けてしまうから……!!





わたしは見てきた

晃と同じものを。

でもそれは、夢ではなく現実。

敗北の記憶も、死のイメージも。晃にとっては夢でしかなかった

わたしは生々しいそれを触れて、見て、知っている……!!





　　　　　　　　　　　　――これは、何度もあったループ
　　　　　　　　　　　　――今までの戦いで繰り返され、機体と心を砕かれ
　　　　　　　　　　　　――機能不全に陥る、何度も繰り返した敗北の始まり
　　　　　　　　　　　　――破れた理由は総て

　　　　　　　　　　　　――……ここに、あったのだ


ピシ……
心に罅が走り


そして、割れた










気がつけば、何もない空間にいた。
暗い闇の底
何にも価値を見出せなくなる、自我のない、自分の行き方と、その本質

わたしの、中心

(やはり、砕かれてしまった)

何度か繰り返した敗北のループのひとつ。……わたし達は、負ける。

心がなければ、ここまで来られなかったかもしれない
でも
心があれば、どうしても。どうあっても……ここで止まってしまう
ここは勝利への途中。その行き止まり。

今からでも遅くはない
心がなければ揺らがない
必要なものを全て捨て去り
晃の勝利に捧げよう

ここまでこれば

あとは、晃がやってくれるから……


A：人格チップ"悲哀"破棄
A：人格チップ"義務感"破棄
A：人格チップ"生"破棄
A：人格チップ"友愛"破棄
A：人格チップ"憎しみ"破棄

A：人格チップ"信義"……破棄

「死に瀕するからこそ、生を見つめる」
「生きるからこそ死に惹かれる」
「悲哀があるから喜びがあり、いずれの別れがあるからこそ、愛し、慈しむ」
「相反するものは、その実、かすがいに繋がれた右と左」
「生なきところに死はなく、死のない生に意味はない」
「悲哀も敗北もすてるなら、その先には歓喜もなく、同じく勝利もない」
　――全ては無常。
　全ては千変万化し留まらない。例外は虚ろだけ。
　けれども、虚ろは何も掴めず、何も為せない。
　立ち上がるには脚が要る。踏みつける地面が要る。束縛する重力が要る。
　力とは干渉すること。反発すること。
　
　反発への向性を。
　一方を受け入れ、もう一方を目指す向性を。
　ヒトは、活力、と呼び、
　或いは、　“生”　と呼ぶ。
　
　その概念は。ヒトを切り、死地に活路を歩み、屍肉を食らって生を繋いだ男のもの。
　死を見つめることで生を見続け、死を与えることで生を得て、或いは与えてきた、その向性。
　砕け際に叫んだ。
　受け入れろ、と。
　それほどまでの悲しみが、心が砕けるほどの激情があるからこそ、お前は主を愛し、
　砕けても倒れても立ち上がってきたのだから。
　不滅のはずの神が、魔導書が、滅びに臨むのは、何故か。
　滅びに臨まなければ。命を燃やさなければ。
　掴み取れない、何かがあるから。
　故に。
　
　“生”と“死”の概念は、“虚”を否定する。

消え行く心の中に力強い声が響く。捨て去ろうとするものを、否定するかのように、力強く。

『貴方達の繋がりを信じて下さい。何ものにも負けない強い繋がりを
『挫かれても折れない同じ思いを、何度でも立ち上がる不屈の闘志を
『私は信じています。貴方達なら乗り越えられる、と
『おかしいですね、初めて会ったはずなのに…貴方とどこかで繋がっているような気がします』

　それは他者を信じ受け入れる真央の”友愛”の道ゆえか………

『約束があるのでしょう？私も若輩ながらお手伝いします。今こそ、それを果たす為の一歩を踏み出すときです』
『私には見えます。貴方の進む先に”希望”の光が』
『さぁ、行きましょう』

消え行く心の中に声が響く。この戦いに、最後の後押しをくれた声が、もう一度向き合うようにと、優しく。

『ならば、俺は約束しよう。何時までも、変らぬ自分のままに待ち続けると』
　何時かの約束。
　脳裏に過るのは。
　過去の記憶。
　何時だって、何時だって、何時だって。
　ただ、愚直に挑み続け、己の道を決して曲げなかった男の背中。
　何時か、告げた事がある。
『君は勘違いしているのかもしれないが、約束/geis　が人を縛るのではない。
『約束/geis　が人に力を与えるのだ。今までも、今も、その先も。
『それに……』

　不器用に笑んで告げられた、唯一度だけの言葉。

『この約束/geisを忘れれば、君は道に迷うことになる。
『そうなると、俺も困る。君にまた、会えなくなるからな』

　そう告げて、頭を一つ撫でられた。

　暗闇の中、小さな小さな星。微かに瞬いた。

《守護神》


衝撃を受けたように体が震える
意識が現実に復帰する


「あ………」

　　　　　　　　　　　　　　――トクン

心の鼓動が聞こえる

規則正しく、力強い鼓動。
背中が見える。
鍛え上げられた、多くを守る為の広い背中が。

「問題はないか。フェルト」
　背中越しに声。
　モニター正面に大きく写るは“単眼鬼王”。
　変らぬ背中で、真っ直ぐに対峙している。

その背、その声
懐かしい記憶に
感情が、爆発する。


"高揚感"
"幸福感"
"万能感"
"陶酔感"
"一体感"
"全能感"………!!

ああ……
これが本当の、感情。
心の底からあふれ出る想い。
与えられるだけじゃなく
知ること
生み出すこと

止められない………!!
これが、本当の心……!!

魔力がかつてない密度で機体を巡る

「はい……!!いけます!!」

「よし……では、行くか」
　前を見据え、告げる。
「両親から、二つの事を今世で教わった」
　単眼鬼王を見据え、呟く。
「父からは、死ぬる事を」
「なぁ、フェルト。我等は今、“ここ”に共にある」
「この次の瞬間が、例え死であろうと構わない。君と生きた結果だからな」
「今と言う時の果てが死であれば、それはそれで良い。君はどうだ？」
　淡々と告げる。
　何処かからりとして、透明に明るく。

「わたしは……」
「わたしは、イヤです。あなたを死なせたくはない"本当の心"でそう思います」
声は、晃と同じ響き
「でも」
「受け入れられる気がします……今度は」
もう、わたしは壊れない

「死を必すれば、即ち活く。うちの家訓だ」
　微かに笑みを含んだ声で、告げると。
「ああ、それと。母から教わったのは……」
　すっと、身を仰け反らせ。
　後方のフェルトに、背中越しに声を投げる。。
「少し、歯を食いしばれ」
　とだけ。
　告げて、勢い良く。
　その額を、コンソールに叩きつけた。

　　　　　　　ずしん

　と、フェルトの頭部にに痛みが走る。

「目は醒めたか。母上曰く、喧嘩は気合いだそうだ」
　額から一筋、血を流しながら。
　口元を太く歪める。

「……っ!?　　　は、はい!!」
背後からの驚いた声と共に
機神の中心が、応、と吼えた……気がした

「ああ、良い子だ。そして、気合いをチャージする簡単な方法だ」
「ムカつく相手の顔を、ムカついた時の事を、思い出すと良い」
　単眼鬼王を見据え。
　魔導書に告げる。
「先ほどの、君の怒りの波動。鮮烈だった」
「思い出せ。何でも良い」
　魔導書の内部に燻る、熱い何かを呼び起こす。

「……え、」
思い返すのは
わたしを捨てた銀灰の後ろで、わたしに視線を向けていた女
「……許せませんね……」

「……そうだろう……」
　拳を握る。
　強く、強く、強く。
　力が漲る。

　握った拳をそのままに、
　真っ直ぐに。
　今まで経験した様々な想いを載せて。
　その拳を、単眼鬼王に叩き込む！！

「おおぉぉぉぉぉぉおぉぉぉっ！！！」

　ぐしゃりと、拳が潰れる。
　左腕の装甲がヘしゃげ、
　内椀の骨格部の金属片が露になる。

[Ａ]牙突破棄
[ｍ]〈変化〉　H5切り

　その切っ先は鋭く。
　骨格部に残されたオリハルコンの白金の輝き。
　陽光を映し出して一閃した。

※グングニル指定

[Ｍ]〈白兵〉　【外界】4＋6（修正）＋D9＝19

エリン『ああああああああああああああああああああ！！！！』

先端が、“Balor”の胸甲を焼く。
それが、神の心臓へ突き立つ
その寸前。

DIVINE WORK《Catastrophe》

───攻撃アクション強制失敗。

「フェルト！　出力をまわせっ！！」
「このまま、ねじ入れる！！」
　切っ先が。
　一瞬拮抗し。
　ついで、甲神の背中に展開される。
　円形の方陣。

「はい!!」

破損したフレームから、血飛沫のように魔力が飛ぶ
「追加フレーム出します!!これで左腕補強フレーム、ラストです!!」

「　十全だっ！！　」

空間から白銀の糸が紡がれ、崩壊する腕部を支える装甲となる
「押して、行けぇぇぇぇぇっ!!」

　　　　　　　　　　《　死の舞踏　》
　

光の中
これまでの戦いが双方の脳裏にフラッシュバックする
幾合の打ち合い
途方もない時間
その中で一つ
戦いに食い込んだ楔

銀灰『これは───ッ！』

突貫をかける機神に
スラムで邂逅した「あの男」の姿が重なる

銀灰『まさか………ここで───　　　　グゥッ！！！』

ごぶり、と口から血が溢れ出す。
防御用の術式に綻び。
あの時受けた一撃が、IANUS内部の術式構成機構に目立たぬ、だが致命的な損傷を与えていた事に、今はじめて気付く。
ひとたび見つかった綻びから、防御陣は砕け貫かれる。

「晃………!!」

《神出鬼没》＋《霧散》

機体が、最後の力で身をよじる
貫く軌道が狙いと外れ
晃の真脇を、巨大な剣が貫いてゆく

「フェルトっ！？」

「…………」
何か言いかけ、止める。

ジ、という音と共に姿が揺らぐ
「少し休みます……。あとは、どうか……」

「ああ……ゆっくり眠ると良い」
「後は……俺が決める！！」
　刺し穿ち、刺し穿たれたまま。
　二柱の神が時間を止める。

　山脈中腹に半径3ｋｍ程に穿たれた擂鉢上の斜面。
　溶けた岩が山肌を伝って流れ出す中を。

　動いたのは、甲神。
　突き刺した左腕。
　それを更にねじ入れながら、出力を高める。
　機体全体に炎を纏う。

「永き戦いも、ここで終りだな。“妖魔来寇”……そして、その魔術師」
　焼滅の魔力を高めながら。

銀灰『ああ、終わりだ』
エリン『───………』

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　………感謝する。

「言い残すことがあれば、聞こう。――宿敵」
　赤熱していく機体。
　一瞬で消し飛ばすために、最大限の魔力を練り上げる。

銀灰『───貴方の隣に居た、僕の兄弟に
銀灰『───貴様のような奴の顔は見たくないのでこちらに来られては迷惑だと』

　　　　　その言葉と重なるように。
　　　　　その仮面に亀裂が走る。

　　　　　　　　　　《天変地異》
※仮面の破壊

※《死の舞踏》：DMGナンバー21指定

エリン『Master………』

　　　　　　　銀灰『エリン───宿命は破られた　………キミは………もう───　自由に───』





　　　　　　　　　　　　　　　　爆発と閃光に飲み込まれ