《難攻不落》っ!!!　トーキョーNOVA the Detonation リプレイ“銀色の虹 with 魔術争乱”

大規模な戦闘が複数行われたため、辺り一面すっかり様子が変わっているが、スラム街である。

ジヴ「………消えた───すごっ」
空を見上げて、ミサイルが跡形も無く消えた事を確かめて漏らす。
ジヴ「………真央～？　大丈夫？」

「あ、大丈夫………です」
「まぁ、ここまでうまくいくとは思っていませんでしたが」

ジヴ「真央も十分無茶じゃない」
立ち上がって、真央の手を引っ張る。

「じ、自分の足で立てますから、大丈夫です
よろよろと立ち上がる

ほぅ、と大きく息をつく。

ジヴ「西島さん」

「……ンぁ？」
寝ぼけたみたいな声。

術の疲労か後遺症か、多少青い顔であるが、笑みを浮かべ
ジヴ「とりあえずは、ですけど。終わりました───」
ジヴ「これ。助かりましたよ。凄く」

「はは、でしょう」
お守りを取って、首に戻す。
「やりませんからね」

ジヴ「あははは。凄いご利益でした。ちょっと惜しい」　　ね、と真央に

「あ、はい。なんだか、天にも昇りそうな感じでした

ジヴ「───逝っちゃ駄目だってば」

「あの、先ほどは助太刀していただいてありがとうございました
ジヴリルのその言葉には苦笑で返しつつ、礼を述べる

「貴方達のためにしたことではありません。それに、却って状況を悪くした。礼は御無用に」
さて、と日本軍に向き直り、
「まだやりますか？」

副官「降伏、といって受け入れてもらえるのかね？」

「状況は終了しました。応じましょう。身柄はＮ◎ＶＡ市民として、Ｎ◎ＶＡ軍に保証して貰いたいんですがね」

副官「………NOVA統治軍は、現在此方に向かっている最中だ」
副官「其方と交渉するが良かろう」
ガシャガシャと、手にしていた銃を地面に置き、彼らは整列。

と、整列する彼らの影が濃くなる。
見上げると、鋼の巨人が光を放ち。
光の粒子となって消え去っていく。
夢の終りを告げるように。

「こちらも、片がつきかけているようですね。西島先生」

　と、皆の頭上から声がする。
　廃ビルの屋上の縁に立つ人影。
　左手にはぐったりとした美しい少女を抱き、右手には古ぼけた書を携えている。

「敵は？」

「掃討しました。こちらの状況も既に終了している」
　裏付けるように、世界を歪める存在感が薄らいで消えていく。
　非日常な街の空気。それが次第に薄らいでいく。
　まるで夜明けのように。

「……」

　飛び降りる。
　西島と、兵士達の間に音も無く着地する。

「さて。こちらは如何にすべきでしょうか」
　見回し、微かに頬を掻く。
　入り組んだ勢力図。政治は元来、得意ではない。

「軍の目標は、君が抱えている二人です。
　引き渡さない限りは、ここを退いても宵の口には精鋭が差し向けられるでしょう」

「“妖魔来寇”は元来、協会の所有していたもの。俺の一存では、引き渡す事は出来ません」
　静かに告げる。
「だが……こちらの黎明教書ならば……」
　言いかけ、微かに言いよどむ。

「……」

空気を感じ取ったのか、片方の魔導書が光を帯び、人の姿を成す。

日本軍と、晃の間に立ち

「……」

晃に背を向けて、日本軍人達を見る
一度だけ、晃のほうを振り返り

「行っても、いいんですか？」

そう、問うた

「自分の持つ公の立場で言えば、そうするべきだと告げるべきだろう」

仏頂面に応え。

「だが」
「私情で言えば、行くなと告げよう」

ぎり、と奥歯を噛む。

「そして」
「俺が、どちらを取る人間であるかは。君が一番、良く知っていると思う」

「約束は、世代を繋いだ無限でも」
「"今"のあなたとわたしがいられる時間は有限」
「それでも、ですか？」

「困らせてくれるな、フェルト」
こめかみを掻く。
本当に困っているのだろうか。
「……」
「何時までも変らぬ俺でいる」
「その約束ゆえに、俺はどんな苦難も死も絶望も乗り越えてきた」
「君が迷わぬように」
「その想いが、俺に力を与えてくれた」

息を吐く。
本当に、重く息を。

「だが、今、初めて揺らいでいる」
「こんな、甘美な誘惑をなされた事は始めてゆえな」

珍しく、途方にくれたように。
だが、何処か応えは決まっていると告げるように。

それを、感じたのか
ゆっくりと目を閉じ、日本軍人達に振り返る

「……行きます。先導を」

一歩
足を踏み出す

「魔導書“黎明教書”。慎んで、貴国に返還しよう」
　感情の混じらぬ顔で。
「魔導書“妖魔来寇”は魔術協会の所有物である。よって、引渡しを望むなら」
「協会にて、大図書館の総司書フィリオーニ卿との交渉に臨まれよ」
　淡々と、副官にそう告げる。

副官「了解した。謹んで貴君の好意を受ける。我々の任務の終了は此れで終了したものとする」
短く晃に対し敬礼。

それに実直に礼を返し。
己の魔導書の背中に声を一つだけ。

「　またな　」

無骨にそう告げて、背を翻す。

「はい」

どうか
次に"出会う"まで、幸せに
わたし達の絆が、ずっと、ずっと、続くように……