《難攻不落》っ!!!　トーキョーNOVA the Detonation リプレイ“銀色の虹 with 魔術争乱”

雨が上がった。
じっとりと金気を含んだ湿っぽさが鼻を突く。
それでも、
久しぶりの晴れ間、連なり固まったビル群の中から、ヒトの気配が屋上へ寄り集まってくる。

隣り合って段違いの広場になった屋上を駆け回る足音。
側溝に溜まった泥を掻き出す日雇いの男達がいる。
長雨にやられて崩れた廃屋の瓦礫を、払い下げの軍用義体に入った荒くれ者が片付けている。
工事にかかっている連中の傍には、昼時を見込んで、屋台が立った。
湯気が立ち、小麦の匂いが金気に混じった。

ぴりぴりと刃のような殺気に囲まれても、
生きるための営みが止むことはない。
橋の上にライフルを持った兵隊や戦車が寄り集り、地区が切り離されていることは誰の目にも明らかだった。
生き延びるためには息を潜めようか、死を覚悟して橋を乗り越えようか。
反発、服従、個々の葛藤が内圧になって押し込められているのが分かる。
それは、生きる衝動だ。純粋な本能だ。
明日をも知れぬ暮らしを送る、再開発地区の人々だからこそ、
生への欲求は純粋で、力強い。

「死に瀕するからこそ、生を見つめる」
「生きるからこそ死に惹かれる」
「眠りがあるから活動を喜び、飢えるからこそ食を貪る」
「いずれ喪われるからこそ愛する。死の宿命を持つからこそ未来を望む」
孤児院前の開けた大通りからは、その光景が見渡せた。

「矛盾しているようで、相反するものは表裏一体」
「同じものなのかも知れませんね」

並んで、その光景を見つめる
「……わかりません」
　
その価値を理解できないわけではない
いや、理解は出来ない……が、胸の中に何か、感じるものはある。
ただ、
「何故、あなたはわたしにそれを？」

「昔、名前のない女の子に会ったことがあるんです」

庭ではここぞとばかりに、孤児院総出で、溜まった洗濯物を手洗いしている。
近所から請け負った洗濯物も多い。貴重な収入源の一つ。

「名前がないから、自分がない。自分がないから他者もない。力を込めても擦り抜けてしまう」
「けれども名前を持った途端、みるみる自分を育てて、普通の子になっていきました」
「貴方もそうなんじゃないかと思ったんです。こう、足場がない」

「わたしに、それは必要なのでしょうか」
ゆるく目を閉じ、問いかける
「わたしにも、それがあったことはある。それはなんとなく覚えています」
「とても暖かかったことも」
「とても安らいだことも」
　
でも
　
「わたしが壊れていったとき、それを最初に思い出させようとした人はいませんでした」
「やるべきことと、そのやり方と」
「そこまでを回復させることしか」
「時間が許してくれなかった」
「それもあると思います」
　
「ただ」
そのまぶたの裏に映るのは遠い景色と想い
「わたしは、わたしが生まれた理由を成すことよりも先に」
　
　　　　　　　　　　――それを取り戻して、いいのか

「分かりません」
さらりと、そう断じる。
「俺には分かりませんし、俺が答えるべきでもないでしょう」
「ただ、」
「人間が生まれた理由なんて、増えるための他にあるんでしょうか。」
「子供を作り、脳とか心とかいう、肉体のレコーダーの一部を引き継いで、死んでいくただそれだけの他にあるんでしょうか」
「なのに、人間は幾つも余計なことを考えて、余計なものを大事にしています」
「貴方が言うところが本当なら、貴方は人間ではないんでしょう」
「だから俺が言ったものも今見てるものも、結局要らないのかも知れません」
「けれども、貴方は志向している。恐らく、もう持ってしまっている」
「レコーダーに残っているんでしょう。そうあるべきであった何かが」
　
「歩くには、足場が要ります」
「重力という軛が要り、上下という不自由が要ります。不自由に適応するレコードと、機構が要ります」
「貴方が志向するものを歩くには、多分、ああいった“方向”が必要になるでしょう。俺たちが活力と呼ぶ向性が」
「……ここの院長には話しをつけておきます。費用も俺が工面しておくので、好きなだけ居るといい」
「ただ、いずれ貴方のところへも軍が来る。そうなる前には出て行くか、ここを巻き込まないよう、抵抗せずに捕まって下さい」
「俺は行きます。貴方も今この街で起きてることを追う気になったなら、連絡を」
踵を返す。

　　――【外界】以下で購入　人格カード“生”
　　即座にフェルトへ贈与。

……
胸に、なにか
湧き上がる思いがあった
戸惑いを感じる
それを、受け入れていいのか
　
それは、明るく
未来への希望に満ち
過去への郷愁に満ち
一つの想いを蘇らせる
　
　
虚空に手を伸ばし
それを離さないようにと、ぎゅっと胸の前で手を握る
　
「……はい」
　
少しだけ遠い背中に答え
それでも、過去の記憶からそれを受け入れられない
握った手は熱く汗ばみ
彼の正しさを伝えているような気がしたけれど
　
　
大切なことを思い出させてくれた人に背を向け、魔導書も歩き出す
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　――彼女は気付いていない
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　――その歩みは、既に変わっている
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　――役割を果たすための"義務感"に突き動かされた歩みではなく
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　――希望という、生き方に突き動かされていると。

◎　晃

登場：S4切り
■リサーチ
　何度も見る“死”の夢

社会：アストラル　魔術協会　　コネ：フェルト　妖魔来寇
10　13

10　　あれは夢などではない。───我が身に起こった実際の記憶。歴史に刻まれた史実。
　　　舞台は紀元前のアイルランド。その伝説は───
　
13　　“物語”は必ず、単眼の鬼神に切り裂かれて終わる。
　　　破壊された体を、魔術により癒し、再戦を挑む。
　　　永久に繰り返される物語───

◎　真央

登場判定:Ｈ３きり
判明した浄化派の施設について

社会：アストラル　　　コネ：ジヴリル　“銀灰”　“黒”
10　13　神業

〈社会:アストラル〉　【感情】８＋Ｃ６＝１４です

10　　浄化派の、と言うよりもこの施設は“黒”にとっての重要施設であるらしい。
　　　多数の防衛部隊が配置されており、それが日本軍と交戦している模様。

13　　“銀灰”達も、その施設に留まり、防衛を行っているようだ。

神業　　その施設とは■■を■■する為の施設であり、■■達にとって■■の■■であり
　　　■■■■■■■■■■■■■










　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　NEXT　02192130～




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　to be continued later......