RL揚： ───聖母殿でそんな事件が起きている頃。
RL揚： 　　　運良く、か折悪しくか。当事者の一人は、聖母殿を遠く離れた赤道直下のこの街に居た。

アニエス： 　その当事者の一人の傍らには少女が一人
アニエス： 　“彼”お得意の軟派……が成功したわけではない
アニエス： 　出会いは真逆。―――声をかけたのは少女が先



アニエス： 　　覚えているのは光
アニエス： 　　……とても愛しい、何か
アニエス： 　　それが何なのかはわからない
アニエス： 　　……覚えて、居ない

アニエス： 　　眼を覚まして、空を見上げて
アニエス： 　　その時心に浮かんだ思いをそのままに視線を降ろし
アニエス： 　　目の前に居た“彼”に、それが変だなんて欠片も思わずに、言葉を紡いだ

アニエス： 「――や、よくわからないけど……ん？よくわからないから、かな。」

アニエス： 「とりあえず、そこでお茶でも飲まない？」

アニエス： 　――そんな誘いに乗ったのが“彼”だったわけだが RL揚： ジヴ「あはははっ。そうそう、そんなだったよね。」
アニエス： 「うんうん。しかもその後キミが男の子だとか実は僕が女だったとか……」
RL揚： ジヴ「よりによって、女の子と間違えて軟派とはツワモノめ。」
アニエス： 「と言うかその時、僕 自分の事男だと思ってたんだよね……今も変な感覚だけど」

RL揚： 　　揶揄した後、ストローをくわえてずずず、とアイスコーヒーを吸い上げる。
アニエス： 　　　カラン、とグラスの中の氷が鳴る

RL揚： ジヴ「そのスカートめちゃくちゃ似合ってるくせに、どこがー」
アニエス： 「――それ、お互い様だよ？」
RL揚： ジヴ「今日の僕は男だもー………」
RL揚： ジヴ「………………？」

RL揚： すっ呆けようとしたジヴリルの表情が突然、凍りつく。

アニエス： 「？」

アニエス： 　　　くるり、と咥えたストローが回る
アニエス： 　　　珍しい表情だなぁ、と……

RL揚： 彼の視線の先にあるのは、街頭DAK。大型ホロヴィジョンは、午後のニュースを放送している。

アニエス： 　　　その視線を追って、同じく凍りつく



RL揚： 『現場からの映像をご覧下さい───』

RL揚： 『───先ほどのニュースの続報です。
RL揚： 　G＆B連合国の大英博物館でも、テロが発生しました。
RL揚： 　犯人グループは先程N◎VAの千早俊之記念美術館・夏の長江遺跡を襲撃した集団と同じテロ組織の構成員と見て、
RL揚： 　国際捜査チームを編成───』



RL揚： 其処に映し出されている、複数の人影。
RL揚： 仮面と外套。だがその隙間から漏れ出ている外見的特徴は、 目の前で凍り付いている少年の物と一致する。
RL揚： 大きな物音は、少年が立ち上がった拍子に蹴倒された椅子。

アニエス： 　　その手を掴もうと　手を伸ばし



RL揚： ジヴ「ごめんっ！ちょっと用事が出来たっ！！！」
アニエス： 「ちょ、待ちなよ！ジヴリ……ル」
アニエス： 「―――………」



RL揚： ホロヴィジョンの中では、破壊工作と殺戮を行う、ジヴリルの姿───

アニエス： 　その背を見送り……見送ってしまい
アニエス： 　　ホロヴィジョンを見上げる事二秒

RL揚： それを見た時の、彼の表情は、尋常の物ではなかった。
RL揚： 　　　　　　　恐怖・悲哀・憎悪・憤怒───ありとあらゆる負の感情を抱いたそれは───

アニエス： 「何を……惚けているんだ僕はッ！」

アニエス： 　　硬く握り締めた拳がテーブルに打ち下ろされる
アニエス： 　　集まる視線を傲然と受け止め

アニエス： 「―――そうだ。僕は……あんな顔、認めない」

アニエス： 　　理由？　それは必要なの？

アニエス： 「僕が、あんな顔………させない。」


アニエス： 　――そうだよ
アニエス： 　　　みんな、笑っているのが　いいんだ

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