《難攻不落》っ!!!　トーキョーNOVA the Detonation リプレイ“Your Grip Hand On!!”

かくて世界は救われて、
しかし英雄の存在を知る者は数少なく、
語り告がれる事もなく、
穏やかに、時間は流れ出す。

繭のように覆われた闇が空色に混じり
少しずつ浄化されて行く
決戦の場であった異界は最早この世に存在せず
太平洋上に浮かぶ島は
元の平穏な姿を取り戻す
他に居た仲間の姿は此処にはない
居るのは自分と――

　　じめっとした浜風にセーラー服に備え付けられたマントが靡き
　　顔に掛かる髪をうっとおしそうに払いのける

「絶望の闇から外に出た感想はどうですか？」

　　　　　　　――終末の獣、概念存在にして、絶望の少女、そして…命樹

　　　　　　　　　　呼び名は様々だが簡潔に言えば一人の少女

「空とは青く美しいと思いませんか？」

　　地面に座り込む、その少女に溜息を一つつきながら、声を掛ける

「そうだな――と同意するとでも思ったか？」
ふんっと鼻を鳴らす。
「今更この性格がころっと変わるとでも思ったか」

「おや、普通小説等であれば、こういう場合は同意するのが礼儀だと思ってましたが」
その答えにクスリと微笑を浮かべ

「事実は小説より奇なり。私は私、そんな簡単には変わらんさ」

「まぁ、そうでしょうね……そう簡単に変われるのであれば」
「貴方はああも、闇に捕らわれなかったでしょうから」
いつもの笑顔で、いつもの毒舌を吐きながら
座ったままの彼女に手を差し出す

「―――……そうだな、その点に関しては、礼を言わなければ為らん」
手を取る。
「まさか、私の世界まで乗り込むとは思わなかった。その手腕は見事」
そして立ち上がる。

「意外と素直なんですね……もっと捻くれてるかと思ってましたよ」

「お前はそうぺらぺら喋るタイプじゃなさそうだ、と言う事だ」
「そんなぺらぺら喋る奴に礼等死んでも言わん」

「そうですか、それは信頼されていると受け取っておきます」
わざとらしく胸に手を当て、お辞儀をすると
「まぁ、今回…私は穴だらけの策を建てたに過ぎません」
「貴方が流石と褒めるべきは、残りの２人」
「白道順とジヴリル＝ＬＳ＝クライス」
「そして、力を合わせた人間の力――」
「もっとも、先方の二人は残念ながら」
「帰らぬ人となってしまいましたが」
目を閉じ、顔を俯かせながら首を左右に振る

「いや死んで無いだろ……」

「おや……騙されないとは、意外と頭も良いようですね」

ため息をつく。
「私が死なさんさ」

その言葉にクスリと微笑み
「そうですね――」

絶望だけが全てではありません
希望だけをもつ事も出来ません
　　　　それでも
日々は終わることはありません
ならば一歩でも進むしかない

「せっかくそれを教えてくれた師が――進めなくなっては元も子もありませんからね」
彼女なりの冗談なのだろうが余り笑えない冗談を飛ばすと
「さてさて、それでは――私は“貴女のせいで”被った被害の処理に当たらねばなりません」

言ってくれる。
そんな事、欠片も思ってない癖に。
「そうか、それはそれは、お疲れ様」

「その残務処理の大変さを考えると、貴女の顔は二度と見たくなかったのですが」
「一つだけ……嬉しいことがありましたので」
「その御礼だけを言っておきます」

「？」

何のことか解らないという顔をする少女にクスリと微笑むと
「誰にも必要な光があるということです……親子なら特に」

それに、おや、と微笑むと。

「それでは――」
「貴女の道に少しでも光があることを祈って」

「お互い、良き、旅路を」

マントの両端をヒョイッとつまむと
最後までわざとらしい態度で頭を下げ
砂浜に止めてあるヘリへと歩いて行く

少女もそれに合わせて優雅に一礼し――……

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　SeenEND